朽ちないからだ
師走に入り仕事場から見える神社に立つ銀杏の木の葉も、すべて落ちていった。
幹と枝だけになった立派な樹木は飾りをはずされた御輿のようにうつむいている。
こうして冬を迎え、来るべき季節を待ち、力を再び蓄える。
巡るものは流れに決して逆らわない。身を預け今日を過ごす。
こんな生き方に習いたいと日々思う。
すべてを送り出しても、朽ちないからだをつくり、源流を守ること。
11月に新作写真集を上梓して以来走り回っていたが、
久し振りに眠る前に時間が掌に余っているのを感じた。
ひと月程トークイベントを3本、大学等での講演会や授業を4本、ラジオ収録を4本、
新聞連載やその他原稿書きなどが立て続き僕も周りも忙しかった。
だが、各地で多くの力をいつももらっていた。だから疲れなどないに等しい。
トークイベント、講演会等へ足を運んで下さった皆様、
この場を借りて厚く御礼申し上げます。
またHPを通じて連絡を下さった方々にも感謝しております。
さて、季節が巡るなかで幾つか紹介を忘れていた出来事があるので、
あらためて紹介しておきたいと思う。
あまり知られていないと思うが11月中旬には東京・代々木にて開催された
「ヒマラヤ国際映画祭」に出掛けた。
普段目にすることの少ないインド、ネパール、ブータン、セルビア等の
映画監督による作品が主に上映されており会期は三日間と短いが
濃厚なプログラムで充実した内容だった。
ちなみに特に素晴らしかった作品は、
「ヒマラヤの匠」(監督:シオク・シアン・ペク・ドルジ/2008/ブータン/39分)、
「神の車」(監督:ケサン・チェテン/2004/ネパール/75分)
の二作を挙げておきたい。
その他劇場内には各国の資料閲覧デスクが設けられ、環境・文化・人権
に関する幅広い分野における情報を提供するNPO団体などが出店しており、
良き交流の場となっていた。
僕は映像作品「チベットの風」(監督・構成・編集 N.Rama)を購入した。
この作品に関しては時々上映会もされているらしいので
興味がある方はチェックしてみてはどうだろうか。
その他、いつの季節でも展覧会やLiveには欠かさず出掛けているが
最近観たもので印象的だった展覧会は現在赤々舍にて開催されている
「渋谷征司 DANCE」展だろうか。
写真集も同時発売されているが、美しい一作となっている。
Liveでは最近ソロ活動を始めた友人の蔡忠浩(Sai Chung Ho)
のワンマンライブへ出掛けた。
風呂ロック以来久し振りに会いに行ったのだが、
アルバム「たまものfrom ぬばたま」に綴られた歌詞は心の琴線に触れる想いだった。
やはり経験に伴った言葉はいつでも強く響く。
真っ黒な冊子に浮かぶ月を眺めながら繰り返し詩を詠むと、
ことの輪郭がさらに深まり、闇に道が開く。
言葉を追う僕らは気がついたらいつでも旅人となっている。
音楽は誰かと誰かの間に彷徨い、まるで渡り鳥のように翼が折れるまで飛び続ける。
だから僕らの頭上には空がひかれているのだ。
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