立合いの季節

Tsuda Nao in Blog 2010.11.09




先週、新作写真集の印刷を終えた。
印刷立合いの現場は、職人方の力に寄ってすでに良きリズムで回っていた。
ありがたいことだ。
手焼きの印画紙を片手に、印刷されてゆく写真を眺め、一枚一枚確認してゆく。
刷られたばかりの印刷は乾くまでしっとりと、そしてひんやりとしている。
小雨に降られたように写真は一晩静かに沈み、翌日には昇ってくる。
だから印刷立合いの二日目、印刷の上がりを風景を眺めるときのように眺める。
毎回ここで自分の目が確かだったかが分かる。
気は抜けない。
結局、3日で印刷を終えた。手応えがからだを伝う。
後は製本がうまくゆくことを祈る。






こうして僕は今年もようやく来るべき季節の入口に立っている。
ちょうど取材で長野にゆくことになった。
新幹線を降りると、空気はすでに引き締まり、冷たい風が吹いていた。
昨夜、氷も張ったらしい。
背中のザックがいつもより心地良くのしかかり、森を歩いた。
ところどころで熊の足跡がある。足下を見ると辺りは木の実だらけだった。
実ったものは必ず、地に落ち、身を運ぶ。
本能と摂理で、自然は生きることを選ぶ。

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