ロングシーズン
「そろそろ、家に帰ろうか。」
随分と移動続きだったが、旅をこの辺りで終えよう。
北国での新しい季節の到来に上着を脱いだ。
三日前に横切った岩手山の山頂は白く光っていた。
僕の足下には春の土を冠った雪が未だ融けないで佇み、
桜は蕾を開けた。
舞い込んで来た春風に新緑を香った。
移動はソウル、パリ、ダブリン、東京、大阪、
神戸、秋田、青森へと続いた。
終着駅となった青森県三沢駅では縁あって
寺山修司記念館を尋ねた。
共に過ごした華道家、舞踏家、寺山家の人々と
言葉を交わし、夜行バスに飛び乗った。
眠りから覚めるといつもの街に戻っていた。
昨日詠んだ短歌を一遍記しておこうと思う。
旅の締めくくりに。
「想像力」 寺山修司・作
まだ一度も作られたことのない国家をめざす
まだ一度も想像されたことのない武器を持つ
まだ一度も話されたことのない言語で戦略する
まだ一度も記述されたことのない歴史と出会う-ロング・グットバイより-
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