旅路 1400km
20日間ほど旅に出ていた。新作の構想を練るべく、
ヨーロッパの最西端に属する島や先史時代、
初期キリスト教時代の古代遺跡などを訪ねてまわった。
毎回ヨーロッパへゆくと頭中の歴史を書き換えなければならないが、
今回も随分と歴史を書き改めた。
それが「習い教わる」ということと「肌で掴む」こととの差異だ。
また夏の終盤も過ぎていたこともあり、
どの街も田舎道もほとんど人など歩いていなかった。
幸いにも古代に迷い込んだかのように日々は過ぎ、延べ1400kmを移動していた。
宿はだいたい夕方に辿り着いた街に泊まるのだが、
向かったところどころで面白いやつに幾人と出会った。
そんな時、一日雨風に吹かれ足腰に多少の疲れが出ていても一気に吹っ飛んでしまう。
「一年間ずっと自転車で走り続けるんだ」と話していたカナダの青年に出会った日も
僕の中で士気が一度は崩れ落ち、同時に更に高いものが立ち上がった。
人間の歴史なんて目には見えないものだ。
舟を漕いで湖を渡り、戻って来た日も、
リタイアした夫婦が温かいスープとパンを焼いて待っていてくれた。
冬期の陽射しは人を導くけれど、
知らない土地の人々にもてなされる食卓は身に深く染み入る。
移動の多い日々だったが、旅の終わりにはパリへより友人達と過ごした。
すでに木葉は紅葉し、冷たい風を背に人々の息は白くなっていた。
- DESIGN TIDE TOKYO はじまります!
- BEAMING ARTS×津田直 “Meeting of the Trees”