過ぎゆく季節の足音

Tsuda Nao in Blog 2009.09.17

しばらく移動続きだった。九州、大阪、和歌山などへ出掛けていた。
飛行機やバス、車で飛ばしているうちに窓の外を眺めていたら
夏が終わってゆくのが分かった。風の匂いも変わった。
いつしか夏休みの子供達は休み明けの眠たい瞼を開いて、坂道を下っていた。
誰かの足音で毎年こうして新しい季節の到来を知る。
こういう季節に見る海も好きだ。
和歌山の太地町を通る国道42号線を車で走っていると、
いたるところで鯨のオブジェに遭遇する。
ここは太平洋と繋がる大いなる場所への入口だ。
きっと足を伸ばし海へと向かえば、泳ぐ鯨と出逢えるだろう。
その日を待ちたいと思う。
そして海から熊野本宮へと向かう道では右手に熊野川の流れが良く見える。
ところどころ幾本もの河川が交ざり合う。
その合流地点では色が深くなり、まるで染色の世界を旅している気分になる。
だから自然と身体は流れを追ってしまう。



ところで先週と言えば、いくつかおすすめしたい展覧会もオープンしたので紹介したい。
まずは杉本博司展「Lightning Fields」へ。
いつ作品と向き合っても、その純黒に美しさを観る。
首都圏へお住まいの方は是非出掛けて見て欲しい。
オープニングの後は、杉本さんが銀座の田んぼに集まるというので立ち寄った。
大先生はいつもどおり子供のような目をしていた。
人は自分が育った土地では唯一、本来の姿を隠せないものかもしれないと思う。
杉本さんと少し話をして美味しい寿司や焼き鳥を頂きながら、
久し振りに出会った友人達と過ごした。


9月10日前後には合宿へ出掛けていた。
丹沢で毎年行われているこの合宿というのは
様々なジャンルから人が集まり行われている。
主宰は友人でハモニカの美土君。
彼はフランス在住だが夏の間、
日本に戻っている時に合わせ合宿を開いてくれている。
今年は僕もゲスト参加したので到着した晩に
山小屋のような家でスライドショーを行った。
振付師、ダンサー、ミュージシャン、大道芸人など顔ぶれは様々だ。
そんな場だからこそスライドショーは生演奏で行った。
その瞬間、瞬間に生まれてゆく流れに皆の身体が揺れる。
1時間半なんてあっと言う間に平らげしまう。
身体はいつでも光を欲している。もう一つ面白いことがある。
この合宿が行われている場所というのは本来は
サーカス団や大道芸の人が使う練習場なのだ。
だから朝から誰かがどこかで綱渡りをしていたり、
部屋を出てふと階段を降りようと思ったら
天井近くで人が空中ブランコしていたりする。
今年はアシスタントのさおりちゃんも連れて行ったのだが、
朝になり気が付いたら床で綱渡りの練習をしていた。

もう一つ紹介したい展覧会がある。
友人で書家の華雪さんが個展を開いている。
僕が寄ったのは、葉山のhacoで行われていた個展「跡」だが、
どうやら同名の展覧会が9月26日(土)~10月11日(日)の会期で
那須黒磯のhaco分室という場所で行われるらしい。
その期間は那須高原にて「Spectacle in the Farm」というイベントも
行われているので合わせて出掛けてみると良いかもしれない。

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