お盆日誌

Tsuda Nao in Blog 2009.08.20

お盆に合わせて仕事で関西へ行っていた。
その足で久し振りに『漕』の舞台となった滋賀県を訪ねる。
目的の一つは『漕』のあとがきにも書いてある松井造船所から連絡を頂いたからだ。
どうやら久しく木造船の注文がなかったらしいのだが、
最近発注があり和舟を作っているらしい。
真夏の陽射しの中、大阪から琵琶湖へ車で向かった。
再会した湖面は海色に蒼く染まり、眩しく輝いていた。
車の窓ガラスを全開にして走ると、夏の浜風が吹き込んでくる。
造船所のある堅田で舟を見せて頂いた。
人の手仕事から生まれ、型作られてゆく一艘の舟には、
木片がどこまでも小さく刻まれ「かけら」となっても
森の息吹のようなもの宿り続ける。その温もりは人に近い。

造船所を後にしてからはアシスタントのさおりちゃんの
実家が近くなので、伊香立へ向かった。
美しい棚田に囲まれた道を登りゆくと、
まるで自分の田舎へ戻ったように落ち着くところだ。
田畑の水路が涼しげに流れている。少し寄るくらいのつもりだったが、
すっかり親戚に交ざってくつろいでしまった。
夕方には弟達と公園でバレーボールをして汗を流した。



翌日は『漕』の制作時に滞在していた民家「湖山荘」へよった。
ここはかつて祖父が夏を過ごしていた家だ。
今回は『漕』でお世話になった主水書房の片桐さんと
先日まで個展をさせて頂いていた名古屋の書店
コロンブックスの湯浅夫妻と一緒に集まった。
このところ久しく休みというものに縁がなかったが、
ようやく夏休みがやってきた。

まずは庭でテントの講習会!これは湯浅さんにお願いしていたことで
さっそく湖畔に美しいMOSS TENTSを組んでもらった。
いつしかバーベキューやキャンプファイアーもはじまって、
僕らの夏は星空の下に広がっていった。夜には浜辺で花火。
指先に火花を散らし、みんなの顔が金色に照らされていた。
この浜辺は奥琵琶湖に位置していて、サニービーチというところ。
キャンプが好きならば、是非一度訪ねて欲しい。
一晩中、湖の波音を聞きながら眠るとゆくはずもなかった土地へと誘われるが、
いつしか真白な朝を迎えることになるだろうから。






翌朝は更に車を湖北へと走らせ、『漕』の撮影地を訪ねた。
本を片手に頁を開いてみる。数年の間に過ぎ去った季節と共に、
植物達は繁り成長していた。


小旅行の最後によったのは伊吹山の麓。
滋賀県は縁あって各所を訪ねてはいるが、ここへははじめてよった。
登山道の入口には茅葺き屋根の民家がいくつも顔をのぞかせている。
空にはパラグライダーで舞う人の姿が見える。
今度よれたら、この西風に乗ってここの集落を空から
眺めてみたいと思いながら町を出た。


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