美しさといふこと~沖縄よ
少し 南方へ 旅に出てきます。
出発前に詩を一遍、読んでから。
「沖縄よ」
(上略)
めくるめく酷烈の陽のもとに
静かに島の宿命は息づいている
褐色の樹皮を鎧ふガジマルの
四季絶えぬ繁りのやうに
お前の生命は今日も若々しい
あの悲しくきびしい孤島の歴史も知らぬげに
地熱をあびた佛桑華は眞紅に赤く
健やかな福木の伸び上る丈は高い
そしてそこは
頑固で優しい赤と白の瓦屋根が波うち
色鮮やかな夏衣の行きかふ場所(下略)
(『美しさといふこと 水尾比呂志随筆集』用美社/1985年より)
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