今回の旅だが、一見すると南北への旅に映る部分があるのだが、実際にはそうではなく、先に北端へ降り立ったことで、実は南方へ、南方へと目指す旅となっていった。つまり日本の最北端スコトン岬に立った時、全ての日本が自分の南側に位置していることを知り、いつしか日本列島の根を探る旅となっていったということだ。また、最南端の島で聞いた、興味深い話しもここに記しておきたい。島の人々が存在することのない、南波照間島という島の存在を信じてきた歴史があるというのだ。それはやがてニライカナイ(我々の住むこの世界とは別の、もう一つの神々の国。あるいは異境。)の存在を巡る伝説へも発展してゆく。これは、古代から人間が「こちら」と「あちら」を結び留め、信仰を伝承し生き続けてきたことの証なのではないだろうか。
(「果てのレラ」展覧会カタログより)
2009年、メルシャン軽井沢美術館で開催されたグループ展「もうひとつの森へ」のため、ドイツ南西部のSchwarzwald(黒い森)と呼ばれる地域で撮影した作品。
陽春の頃、ドイツにあるSchwarzwald(黒い森)を訪れた。早朝、森の始まりを予感させるような小さな樹に光が降り注いでいる。思わず身を縮め、枝を見つめる。樹は人と同じようなところがある。日々、伸びたい思いと広がりたい思いが絡み合い、大きな存在のそばで生き方を教わり育ちたいと願っている。ならば年月を味方につければよい。百年の歳月といまここで約束を結べばよい。
(雑誌『Esquire』 JUL. 2009 Vol.23 No.7より)
果てのレラ 展覧会カタログ Rera Faraway
– 日本列島の最北端の礼文島、最南端の波照間島への旅によって生み出された作品。そもそも日本の端とはどこなのか、そして浮かび上がるこの国の姿・かたちとは。 この列島に散在する島々を訪れ、辿り着いた先に潜む世界…津田直の眼に映し出された新しい世界への感覚は、わたしたちが今いるこの場所から、遥か古の時代へと、そして見えない未来へと旅立たせてくれることでしょう。
(一宮市三岸節子記念美術館「果てのレラ」展プレスリリースより)
– 2009年7月11日発行 発行:一宮市三岸節子記念美術館 写真、テキスト:津田直
編集:平野恵美
デザイン:湯浅哲也
図版:カラー 写真
サイズ:215 × 215 × 18mm
フォーマット:変型 二つ折り 36p SOLD OUT