九州発~春風

Tsuda Nao in Blog 2013.04.16

夕方から自転車に跨り出掛けた。
ソメイヨシノや枝垂れ桜はすでに散ってしまったけれど、
八重桜が見事に花を咲かせ、福岡城跡お堀沿いの道では
時々花吹雪が舞い、春風が気持ち良い季節になってきた。

今はしばらく続いた移動が一区切りして、福岡に戻っている。

だから日々の移動は自転車だけというシンプルさ。
こういう平坦な場所で暮らすのは、学生時代に大阪で暮らして以来かもしれない。
新鮮さはまだ抜けそうにない。

さて、少し時間が空いての更新となってしまったので、
ここ一ヶ月くらいの話をまとめて書きます。

3月中旬からは2週間くらい原稿書きに追われていたという感じだった。
その間も東京を往き来し国内移動が続いていたので、
まるで移動式のオフィスのような状態で定宿に籠もったりしていた。
だから時々、今いる場所を忘れてしまうことがあった。
きっと頭の中ではまだミャンマーや奄美などを旅しているのに、
身体は東京に在ったりするので、その空間移動にずれが生じるのだろう。
そんな時は食事の時間が大事で、そこでバランスを取り続けている。
旅を終えると、数日の間に機材チェックや装備のメンテナンス
をする癖がついているけれど、3つくらいの移動が重ってくると
仕事場はさすがに散らかってくる。
足元には泥の着いたトレッキングシューズやアウトドアーアイテム、
トランクやキャリーバッグが数個、洗濯を待つ服の山、読みかけの
新聞や本の束、各地域の地図や資料、届いてまだ封の切られていない郵便、
未現像のフイルム、ベタ焼きなどが散在している。
そこから手始めに、メモ書きをまとめる作業を出来る限り
早い段階で進めて、原稿を書き始める。
合間でインタビュー取りが入ってきたりするけれど、
話をすることで頭が整理させることもしばしばある。
とはいうものの、書き仕事は得意な仕事ではないので、
縄文フィールドワークで能登半島を訪ね歩いた。
(次号の「PAPER SKY」にて掲載予定)
やはり、空の下で写真を撮り、世界と触れ合うのが性に合っている。

そう言えば、ここ一年くらい向き合ってきたことについて、
現在発売中の「考える人」2013春号(新潮社)に原稿を書いた。
なぜ拠点を九州に移したのか、「現代」をどう捉えているのかなどについて。
興味がある方は是非読んで下さい。小林秀雄特集も面白いので。

また最近は熊本が身近になったこともあり、3月下旬には熊本県南関町で
開催された「はるかぜ2013」というロックフェスへ遊びに行った。
ラキタという沖縄と縁の深いミュージシャンが参加していたこともあって、
応援しに行ったのだ。
このフェスというのはミュージシャンの平井正也さんが中心となって
日本各地のミュージシャンに声を掛け、賛同し参加してもらい、
地元企業などに協賛を募り開催されている。
文字通り手作り感たっぷりの野外フェスなのだが、平井さんの人柄
あってこそ実現できているイベントで、その熱意がこっちまで伝わってきた。
2年前には東日本大震災によって多大な被害を被った福島県いわき市にて
開催をしているが、今年は被災地でライブを行うのではなく、
福島から子供達を招待するなどして熊本での開催に漕ぎ着けたという話を聞いた。
その背景には、「普段、思いっきり外を走り回ることができないでいる
福島の子供達に、熊本に遊びに来てもらい、安らぎと喜びを渡したい」
との思いがあったようだ。
暖かい陽射しの下、音楽に抱かれながら子供達は草の斜面を走り回り、
いわき市から駆けつけたミーワムーラの歌声が夕方の空に響き渡った。

4月に入ってからも再び制作や打合せなどで東京滞在が続いた。
次々に上がってくる校正や色校チェックなどで、日々目まぐるしかったが、
ひととき都会の喧騒を抜け出し展覧会を幾つか観に出掛けたりもした。
なかでも素晴らしかったのは、国立科学博物館にて開催中の「グレートジャーニー・人類の旅」展。
会場は春休みの子供たちで賑わっていたが、関野吉晴氏
(探検家・医師・武蔵野美術大学教授)の成し遂げた、
壮大な旅路を展示と共に辿って行くと、血が騒いだ。
この展覧会には「この星に、生き残るための物語」と副題がつけられている。
それは6万年前から歩み始めた、「人」の歴史を辿る果てしない旅なのだが、
我々がどのようにして「ここ」まで歩んで来たのかを、
現代社会のつくった物差しではなく、それぞれの大陸や島々に生き残った
先住民族の生活、知恵、生き方から読み取ってゆくというもの。

その他、最近観た展覧会、映画で記憶に残ったもの幾つか挙げておきます。
◎展覧会
・上田義彦展「M.River」 会場:Gallery 916
http://www.gallery916.com

・「パラの模型/ぼくらの空中楼閣:パラモデル」展 会場:メゾンエルメス8階フォーラム
http://www.art-it.asia/u/maisonhermes/?ca1=2

・ 植田正治写真展 会場:BEAMS FUKUOKA
(便利堂が制作をしている「遙かなる日記」をはじめ、コロタイプの
オリジナルプリントが絶品だった)
http://www.beams.co.jp/news/detail/1305

◎映画
・「The Lady」(リュック・ベッソン監督作品)
(現在27年振りに来日中のアウンサンスーチー氏の半生を描いた映画、スーチーさん来日直前に渋谷のTSUTAYAで借りてやっと観れた)
http://www.theladymovie.jp

その他、近いうちに日程が合えば、「ソフィ・カル展」原美術館(東京)、
「京都グラフィー国際写真フェスティバル」(京都)を観に行きたいと思う。

最後に、今年2月にミャンマーで撮った夕陽を一枚。

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